大久保ヒロミ「くねくねまんが道」インタビュー前編

大久保ヒロミの「くねくねまんが道だな」(前編)
自虐的育児漫画「あかちゃんのドレイ。」がポテンヒットとなった漫画家、大久保ヒロミ。読者から募集した質問に今まで語る事のなかった漫画家人生を振り返るロングインタビュー前編。聞き手はデビュー当時から大久保ヒロミ先生の作品を良く知るおっちゃん、デジタル系アナログ集団のYOU☆CAN。

P1040216.jpg――幼少期はどんな女の子だったの?

とにかく絵を描くのが好きな女の子でした。

――漫画家になろうと思ったきっかけは?

幼稚園くらいの時に自然に…。それからいろいろ、なりたいものは変わったけど、やっぱりどこか根底に「漫画家」っていうのがあった気がします。

――デビューした時の気持ちはどうだった?

なんか、なれると思ってたんだけど、ほんとになれた!みたいな。若さって怖いですね…。

――アシスタント経験はあるの?

関東に住んでる時に、何人かの先生のもとでお仕事させていただきました。周りのアシスタントさんが凄過ぎて、私なんか全然役にたってなかったです。

年表で見る大久保ヒロミ先生の歴史
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――もし漫画家になっていなかったらどんな仕事をやってみたかった?

卒業文集には絵を描くお仕事って書いてました。あーなんだろう?動物をお世話する仕事にも憧れていました。あと漫画家になってからだけど、くそ忙しい時に3回ほどヤクルトレディーに誘われたけど忙しすぎて断念しました。今はなぜか誘われなくなりました・・

――ペンネーム国分町子とは?

デビューした時のペンネームは確かに国分町子なのです。当時住んでた所の、隣町の名前です…。デビューが決まってすぐ、担当さんに本名の方がいいよ~と言われて、その後は本名になりました。

――影響を受けた漫画家さんいますか?

子供の頃、とにかく「なかよし」が好きで、その中でちょっと怖い話を描いていた松本洋子さんが大好きでした。

――読み切り作品が多いけど特に好きな作品は?

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デラックスヤングユーに描かせていただいた「パーフェクトサークル」とか、One more kissに描かせていただいた「黄金ラブソング」とか。誰も知らないと思うけど(笑)。コメディ全開じゃない、ちょっと重い話の方が個人的には好きです。

cute.jpg――デビュー7年目にして初の単行本「キューティーバディー」を出せた時の気持ちは・・?

長かった…。

――チアリーダー物って珍しいと思うんですけどなぜこの題材にされたのですか?

大学の時チアリーダーをやっていて。チアリーダーをやるに至った過程は長いので省きますが…。その時感じたことを描きました。



kig.jpg――「KIG彼氏いないガールズ」が初の連載漫画でしたけど何か苦労しましたか?

自分的には苦労した印象はなくて、楽しかったです。すぐ打ち切りになったけど。

――モテる努力がおもしろい漫画だけど御自身の経験が生かされてるの?

私自身は正直「モテたい」とかあんまり思ったことはないけど、漫画の題材的に絶対おもしろいと思って描きました。体育会的にモテる特訓っていうのが…。ウケなかったけど。


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――「あかちゃんのドレイ。を書く前には漫画家をしばらく休む(辞める)決意だったと伺いましたが描かれるきっかけは?

CIMG0423.jpg私は全く描く気はなかったけど、編集さんに「産後病院で暇だから、短いペー ジで出産エッセイを描いて」って言われて、描いたらいつのまにか育児連載の話になってた(笑)。

――それでやるしかないと!!

そうねぇ断れる性格ではないので。
エッセイが初めてで、まったく何の狙いもなく単純にその時思った事を描いて、でも基本的に漫画としてこう言う風に描けば面白いなと言う事は常に考えていて・・・それも含め自然に描きました。
描かせて頂けてありがたかったです。



――あかドレは育児ママさん達の反響が大きかったのはどうしてだと思いますか?

結構あかドレをやっている時にインタビューをされる事があって、その時の質問でビックリしたのは、ああいう描き方・・・すごい育児が辛いとか、子供にイライラするって事を描くのは、自分がダメな母親と非難されるって怖さはなかったですか?って聞かれて。

――確かに非難する人もいるかもしれない

私はそれを描く時に怖いと思った 事は一切なくって、その意見にびっくりして。漫画を描く時に自分が良く見られたいと思った事はなくって。どうやったら笑ってもらえるかどうすれば面白くなるか以外に考える事もなく。そこで自分を貶めるたり自分が悪人になる事があっても、それが面白ければそれでいいし、自分をよく見せるって事は漫画の中ではない。

――確かに漫画の中のピロミは良くない母親に描いてる部分もあるよね。

でもあれも違うよ!!本来の私とは(笑)

――それが漫画としての表現?

そう!エッセイって言われるけ ど、全くそのままの自分を描いている訳じゃなく、ちゃんと漫画として昇華させて描いてるつもりだよ。思った通り気楽に描き始めたけど、でもそのままの自分の生活を描いても別に面白くない。

――確かにそのままの私生活だけじゃ漫画として面白くないかも。

漫画として脚色して作って自分を悪くしても身内を貶めても”芸”のためにはって所があって(笑)
家の家族も旦那も何描かれても許容してくれるから描けたのかもしれない。

――家族の理解力はあるよね。

親は社会的な人としてはダメダメではあるけど。

――今でもそこはプッシュするよね。

当然当然(笑)。ただ私の作品や私のやることについては誰も文句は言わない。
私の周りは自分を良く見せたいって欲がない人ばっかりでなので、インタビューで自分が悪く見られる事に怖くないですかの質問にほんとビックリした。だって漫画でしょ (笑)。

――その自由な自虐的な所がウケた要因?

わからないけど、だんだん描いていくうちにどんどん共感してくれるママさん達が増えてきて、その人たちの救いになりたい気持ちにもなった。最初はこんなに長く描く気はな かった訳で、ネタも無いです無いですって言い続けてきて・・・。担当さんも育児経験者だったので、二人三脚で作った感じで す。

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――現在お子さんにはどんな母親像として映っていると思いますか?

上の子は意外にと言うか、自分で言うのもどうかと思うけど、私のこと「そこそこ頑張ってるんじゃね?」って思ってくれてるみたい。私は自分が親としてまったく自信がないので・・・いい母親では全然ないと思うけど、それでも良く言われる子供に。

――それは最近の事?

ちっちゃい時からそう言う雰囲気はあったよ子供に。

――お母さん凄いって感情?

うん・・・。けど私が、子供の頃の家庭環境で、私自身、家の中で感情を抑圧する子で、親の顔色をずーと見て親を怒らしたりワガママ言わない子供だったから、家の子もそう なんじゃないかって、すごく思うことがあって。

――なるほど。そこで自分が育った環境や苦労を子供達にはさせてはいけないと努力をしている訳でしょ?

努力はしているけど・・・。やっ ぱり、何処まで行っても子供の本心は分かりようがない訳で、自分の自己否定みたいなものが・・・どんだけいい事を子供の為に頑張ってやっていても、子供が幸せかどうかなぁ~って気持ちが絶対消える事がない。

P1040221.jpg――なかなか子供に聞くのも照れるよね。

でも子供は言う。お母さんはすごい!すごい!って!!それはお母さんが怖いの?みたいな

一同:大爆笑

――ちゃんと会話してるからだと思う。

子供には言うの、いろいろ。お母 さんはダメなのでとか・・・(笑)。自分が子供に対して感情的になった時に傷つけた事もあるし。


――傷つくからこそ分かり合える事もある。

そうそう、親子関係で傷つかない事なんてあり得ない事で。私は母親にいろいろされた事で一番嫌だったのは、それに対して「どう言う気持ちでやったのか?言ったのか?」っていうことに何も説明がなかったことで・・・。私の存在が悪いんだ、私の存在が悪いんだ、みたいにどんどんなっていって。子供にはそう 思わせたくないのがあって、私が感情的に子供に怒った後も「今のはお母さんの個人的な思いで怒った訳で、あなたが悪いんじゃないよ」って いちいち付け足して言ってしまう。そう言うのもあって、お母さんは真面目で家事もして漫画家って特殊な仕事もして、それがすごいって子供 は思っているみたい。
ちょっともしかしたら子供の心的には距離があるかもね。すごい人と思われている反面・・・。

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P1040213.jpg――子供ってちょっとだけ大人をなめてる所があるほうがいい時もあるかもね。

だから、その役割は旦那(ピロキ)!!

一同:爆笑

すべてが適当なので。

――でも実際のピロキ(旦那)は漫画とは違うんじゃないの?

性格は漫画のまんま。そりゃもうマイペース!いい加減でマイペース!それで救われる。

――その夫婦バランスがいいのかもね。

そうそう、大ざっぱに言うとこのバランスは嘘じゃないよ。
けど私はこんなに漫画の中みたいにすぐ怒らない。怒る時はまとめて投下する!!

――いっぺんに爆発するの(怖)

いっぺんに爆発して周りから 「えっ何で?何が起こったの?」ってなる。怒る時はちょっとづつ小出しにしてって子供に言われる。
旦那は我慢はしない。その都度その都度瞬間的に怒って瞬間的に忘れるから、子供が、怒られた事も覚えてない(笑)


やくざぴろみ.png――大きいのやると心に刻まれちゃうよ。

ほんとにね・・・。だから小出しでって言われる。

――漫画では描かれてなかったけど夫婦ケンカの実態は?

ケンカは私が一方的にキレ倒すだけで(笑)

――はははーこわ!

私~怖いよ。前世ヤクザだと思う!!

――それいいね。

旦那は、怒らせた事をまったく分かってない訳よ。常に常に!!だから私がキレた時に「なぜ?」って言う反応。そして「ごめんなさい。ごめんなさい。」みたいな感じで「ご めんじゃなくて!!」って返すとまた「ごめん。ごめん。」言ってくるので「何がごめんか分かってないやろがぁぁぁ!!」って感じ(笑)

・・・とまぁこんなふうに私まとめてキレるんだよね。だから旦那にも小出しにしてって言われる。


――怒りを溜めるとちょっとした事でムカつくようになるよね。

そう、そうなのよ~溜めると ね!!
最近はもうだいぶなくなったよ。 自分で溜める事はやめようとか、頑張りすぎる事をやめようとか、縛りをとってからは逆にケンカとかは無くなってきたよね。
世のお母さんとかみんな頑張りすぎ!
あかドレの時も結構すごいまじめに育児してきたよ。今は全然ゆるくなったけど。


――育児と仕事の気持ちの切り替えはどのようされていますか?

最初は子供の事を考えながら仕事をしてたら頭の中「ぐるんぐるん」になってた。
それで子供の事も仕事の事も忘れる何かを間に挟むようにしてます。例えばおやつ食べるとか、音楽聴いたりちょっとテレビ観たり、気持ちをリセットする時間を作っているかなぁ。

――どんな時に少女になりまたどんな時におばちゃんだと感じますか?

P1040215.jpgそりゃいっぱいあるけど。主におばちゃんと思うけど自分の事は。

――おばちゃんって言葉使いだすと気持ちが楽だよね。

楽ね~やっぱり。

――つかみで「おばちゃん」って使うとこれほど魔法の言葉ないよね。

ないよなぁ~

――時には「お姉さんでしょ」って言うこともあるんじゃないの?

なぁ~い、なぁ~い


――でも若い子に「お姉さ~んボール取ってくださ~い」って言われたら

そりゃ嬉しいよな~!!(興奮)
でもね永久に自分が子供であるなってここ何年かで思った。姿形はおばちゃんになるけど気持ちが成長してない。

――それは成長するとはちょっと違って自分の芯に持ってる物だよ。

そう!持ってる物は消えない。

――成長する為に人は頑張るけど人間の芯にあるものは中々変われない。

そうそう!そのことに究極、ここ何年かで気づいて。やっぱり理想があって、お母さんになったら怒るまいとかいつも綺麗な服着るとか・・・けど、人間である以上感情がある訳で、それは絶対に消えないって分かったし、お腹すけばイライラするし、それは子供と一緒な訳だし、大人になっても生理現象でイライラするとか、ちょっと肩ドーンとぶつけられたらムカってくるとか、そんなもん無くそうとしても無理な訳で、そこで開き直った感はあるから最近子供返りしてきた。

――えっ子供返り?

感情そのままに認めようみたいな感じ。

――子供にもその感情はあると思うけど・・堂々と言えるのはおばちゃんだよ。

そうね(笑)その開き直りがおばちゃんよね。昔よりは思うことを言うようになったけど、でも別に思ったことをすぐ口に出して言うタイプじゃないと思うけど・・・。ただ言う言わないは別にして、昔は感情を否定してきたけど今はそれが無くなってきた感じかなぁ~。

――ところで少女になる時はいつなの?

恥じらいみたいなものかなぁ?これを描いている時はあったよね・・・まだ。

――今は無くなった?

恥じらい・・・無くなったなぁ~ どこ行ったんだろう?絵を描いてる時が楽しかったりとか、音楽聴いてときめくとかすると、子供の時となんら変わってないなぁって思う。



取材・2013年9月17日・文/撮影=YOU☆CAN(Life Cycle代表)